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Interview インタビュー

――『オーケストラ・クラス』の企画はどのようにして生まれましたか?

ある晩、共同脚本のギィ・ローランが電話をかけてきて、貧困地区の少年たちがクラシック音楽を演奏する様子を追ったルポルタージュを見たと話してくれました。ギィは商業的な映画に携わる脚本家だけど、このルポを映画にするなら僕だと直感したらしいのです。実際に、この子供たちの生いたちと僕自身の生い立ちにはなにか共鳴するものがあると思い、早速、そのドキュメンタリーの舞台、フィルハーモニー・ド・パリが運営するDémosプログラム(子供のための音楽教育プログラム)の責任者をたずねました。彼らは僕らを歓迎し、仕事がしやすいように取り計らってくれました。実際に見学してみてオーケストラの授業や、フランス国民教育省の帽子をかぶった子供たちがいることに興味を持った僕は、郊外からパリへ行く道中、この子供たちと話してみました。そして、先生の指導のもとで練習する彼らを少しずつ観察するうち、作品のあらすじが出来てきたのです。アーノルド役は、パリのベルヴィルで出会ったバイオリン担当の少年がモデルになりました。問題は、作品の中だけでなく、実社会にもある。そう思い、本作では、モチーフとなる希望と、避けようとして逆に近づいてしまう失望感とを対比させるために、子供たちの生活の様子や、哀れみ、暴力、放棄、反世間的態度などが芸術と対峙する様子を、映像や会話の中に入れました。

――子供たちは、どのように選んだのですか?

大まかには、キャスティング担当のジャスティンヌ・レオキャディと助手が、作品の舞台となるパリ19区のプラス・デ・フェットで先行させておこない、週末に僕が、若い志願者とその親たちに会いました。子供たちが次々と到着するところへ、奇跡のように現れたのがルネリーでした。アーノルド役にぴったりで、不可欠な存在であることは明白でした。

――子供たちに、大人同様の演技指導をしたのですか?

もちろんです。極端に活発な彼らに対し、映画監督の威厳を見せつけるのではなく、彼らの兄貴分として、小さな弟や妹と接するように自然にふるまいました。真面目な態度で撮影に向きあい、自分たちの気持ちや繊細な部分を表現してもらうには、それが不可欠だったからです。少年の心を開くためには、相手を賢いサルではなく一人の人間として扱わなくてはなりません。信頼し、好意を示し、愛してあげる。その覚悟がないといけない。しぶとい彼らとともに仕事をするのは至難の業でした。落ち着きのない子が大半で、あるとき、2日間ほど、彼らを撮影現場から追い出したこともあります。ショックだったでしょう。彼らにとっても撮影は大事だったから、呼び戻されてからは、とても真剣に打ち込んでくれて、最後には感動で胸がいっぱいになりました。彼らが心の底から扉を開いてくれたからです。

――キャストの中にバイオリン奏者は?

一人もいません。マイナスからのスタートでした。こんなこと無理だ、4か月で演奏家になれる訳がない、と皆に言われました。でも子供たちには、実際の練習で経験したことも、役に生かして欲しかった。この作品のテーマであり、僕がめざす目標は、シモン同様、子供たちをフィルハーモニー・ド・パリに導くことです。彼らは本当にたくさん練習しました。カリキュラムの初め、授業は週に2時間しかないのに、次の合同練習では急に学年末のレベルに持っていくのですからね。ルネリーに関しては、役もそうですが、バイオリンの素質もあったので、成功でした。プロの音楽家を演じるカドもとても熱心でした。3週間の集中練習後に電話をくれたとき、彼は、どれほど難しいか、自分の苦しみを僕にぶちまけてきました。同情はできません。ただ僕は、彼らにやり遂げてもらうしかありませんでした。こうして迎えた初めての合同練習での「シェエラザード」は、ハードな練習の成果を出し切った彼らの自信は倍増するばかりでした。

PROFILE
ラシド・ハミ 監督/脚本 Rachid Hami

1985年アルジェリア、アルジェ生まれ。アブデラティフ・ケシシュ監督に師事、役者としてのキャリアを築く。出演作に『身をかわして』(03)、『キングス&クイーン』(04)、『ふたりの友人』(15)などがある。短編『Point d'effet sans cause』(05)で監督デビュー、長編1作目では、ルイ・ガレル、レイラ・ベクティを起用し『Choisir d'aimer』(08)を撮影、本作が長編2作目となる。